続Super Game Page ―悪徳の栄え―

アクセスカウンタ

zoom RSS 背反

<<   作成日時 : 2007/01/17 05:30   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

読書感想文ばかり続けて恐縮です。しかし、研究に関係ない本を気兼ね無く読めるというのは爽快で、ついつい何か書きたくなってしまうのです。

唐突ですが、僕は翻訳についての基礎的なことは、理論と実践の双方をそこそこ学んできています。といっても、翻訳というのは非常に怪しいものでして、科学的分析の対象にはまだまだなっていません。恐らく、人間の言語能力の最高の発揮形態が翻訳(文学作品)だからでしょう。「なぜ人は翻訳できるのか?」のごときテーマに一定の答えを与えるだけでも、これから千年単位の時間が必要になるのではないかと思います。「なぜ人は言語を使えるのか」の触りの触りでさえ現時点ではほとんど明らかになってませんから、母語を習得した上でその運用の更に先となると完全に未知としか言いようがないのです(言い切るには問題があるかもしれませんが、僕はこのように確信しています)。

何が言いたいかというと、翻訳については、一応のところ、僕も一家言を持っているということなんです。

翻訳家の仕事翻訳家の仕事
岩波書店編集部

岩波書店 2006-12
売り上げランキング : 3560
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
僕と翻訳の出会いは、澁澤さんの『悪徳の栄え』です。翻訳についての僕のイメージは、大部分がこの作品に基づいています。で、基本的には、「翻訳は原典を土台にした訳者の自己表現に他ならないのだから、その自己表現にどれだけ価値を見出せるかによって価値が決まる」と考えています(これが一家言)。この点、『悪徳の栄え』だと「澁澤龍彦によって語られるサド侯爵の思想の解釈及び日本語での表現」に僕は最大の意義を見出していますから、誤訳がどうとか書かれているのを見聞きしたところで、「だから何?」とそんなものは突っぱねます。

しかし、逆のことを言ったりもしていることに恥ずかしながら気付かされました。『星の王子さま』について書いたように、いざ原典を見てしまうと、規範的な視点から「いかに原典を正確に解釈しているか」を重視してしまったりもするのです。もっとも、『星の王子さま』の訳で僕が非難した幾つかのものは、日本語として明らかに成立していない箇所が少なくなかったことに加えて、この『翻訳家の仕事』から野崎歓氏の表現を少し借りるならば、「起点言語の作り出す埋め難い溝を跳躍する際に目標言語が見せる筋肉のうねり(≒自然な訳文を作ろうとする訳者の挑戦)」とでも言うべきものが僕にはポジティブな形では全く見出せなかったという事情もあります。とはいえ、言ってることとやってることが結構対立してるのは間違いありません。これは、「原作者」、「訳者」、「表現者」、「読者」がごちゃごちゃになっているというわけです。こうなると、このあたり考え直さなきゃいけないなと思います。最もスマートなのは、原作者も原題も完全に伏せてしまうことかもしれませんね。

本の内容に戻ります。日本語は翻訳という形で外国語(主に中国語と西洋語)をかなり取り入れていて、これはかなり大きな要素になっています。語彙レベルだけでは済まず、文法のレベルを超えて、更には文章構成法に至るまで外国語を無視することは全くできません。「翻訳家によって今の日本語が作られた」と言ってもいいくらいです。しかるに、そんな日本語によって生かされているにも関わらず、自分なりの筋道立った「翻訳論」を持った人というのは驚くほど少ないのです(理論としてではなく、あくまで「翻訳ってこういうもんじゃない?」程度のもの)。その必要が無いというのは、ある意味では日本語がそれだけ強いということでもあり、余計な手間をかけないで済む点で幸いでもありますが、翻訳について考えてみるのは大事だと思います。こんな要請を常々抱いている僕からすると、こういった本が新書で出るということはまさに喜ばしいことです。1つ1つのエッセイは簡潔でありながら内容豊かで、37人分も収録されてますからバリエーションも十分です。まさに翻訳論構築にはうってつけです。強くオススメします。

それにしても、アメリカといい日本といい、翻訳者は作家のなり損ないみたいな扱いを受けることが多々あるわけですが、こうして翻訳と離れたエッセイを読んでみたりすると、どの方も研ぎ澄まされた文体を持っていて、そこらの作家は軽く上回る(言い方には問題あるかもしれません)と思ってしまうことが多々あります。こういう人達の日本語が陰ながら強い繁殖力を誇ってきたとしても全く不思議ではありません。


補足:
ちなみに、「人間皆翻訳家」みたいな何か言ってるようで何も言ってない逃げは、単に言葉の定義を弄んでいるだけなので僕は嫌いです。この文章は全て、狭義の翻訳についてのことです。


参考:
星の王子さまブーム
http://liquidmetal.at.webry.info/200612/article_7.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
背反 続Super Game Page ―悪徳の栄え―/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる