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zoom RSS 『NHK問題』

<<   作成日時 : 2007/01/19 06:39   >>

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単に読書感想文なので、もはや記事のタイトルをその対象とした本のタイトルにしてしまえばいいと思うようになりました。

NHK問題NHK問題
武田 徹

筑摩書房 2006-12
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さるところから紹介されて読んだのですが、正直に言って期待外れの内容でした。個々の事例は面白くとも、肝心の筆者の主張が、言葉の定義をひたすら弄ぶことに終始している点がいけません(これが社会学系の人間の手口なのか?)。結局、タイトル負け、オビ負けしてしまっています。また、ところどころにある技術面に対しての言及には、知識の乏しさが見え隠れしてしまっていて、全体として上滑りした印象を拭いきることができません。更に、BRCという何の機能も果たしていない委員会に所属しているということ(「PTAの手先」以上の働きには大いに疑問)、随所に散りばめられた思想的な偏りもマイナス要因です。まさに、抽象的かつ空虚な言葉遊びでしかないというのが僕の偽らざる感想です。

しかし、NHKや放送を巡る歴史的経緯が整理されていることには価値があります。今の放送を知るためには、その歴史を知らなければなりません。この点、「放送(そしてあらゆるメディア)は政治と常に切り離せないものであり続けてきた」ということを、具体例と共に知ることができるというのは、生まれたときからテレビがあって当たり前の生活を送っている僕のような人間からすると、ありがたい限りです。メディア史に興味がある人にとってはうってつけです。

さて、ここで話をちょっと変えて本題に入ります。こうして『NHK問題』と題した新書を今の時期に出す以上、最も答えなければならないのは、「なぜ受信料を払わなければならないのか?」という点だと思うのですが、残念ながら、この本ではクリアーには語られていません。僕としては、結局のところ、NHKの果たしてきた役割、これから期待されうる役割を考えたとき、それが日本にとって有益だと信ずるに足るから「受信料を払うべきだ」ということになるのだと思います(難しい法理論とかは抜きにして)。ここで重要なのは、NHKの役割をどう捉えるかという問題です。「今ここで放映されている1つの番組を見るか見ないか」と狭い観点から捉えるとスカパーのペイパービューと何ら変わらないわけですが、もうちょっと広い観点から捉えれば、「日本全国どこでも放送を受信することができる状態が維持されているということ」、「必要な情報が高い確度でもって提供される状態が維持されているということ」、「放送やそれに関連する技術開発が継続的に行われ、成果が社会に還元される状態が維持されているということ」、「文化芸能の活性化が継続的に行われているということ」、「一国の映像を広く蓄積し、将来に渡って利用可能な状態が保たれているということ」などなど、様々な役割を見出すことができます。「今ここ」のニーズに加えて、一種の寄付やら保険やら投資やらが混ざったようなものを想定すると、1ヶ月1500円弱(地上波、1世帯あたり)の受信料は別に高くないのではないかなと思います。

ただし、金が不透明に使われたりするといい気がしないのは当然ですし、役割の多くは体感しづらいものでもありますから、ひいきにしてる専門チャンネルに喜んで払うのと同じ気分では払えません。こういう情況の背景にあるPR不足を解消すると共に綱紀粛正に努めるのが急務と言えるでしょう。とはいえ綱紀粛正はまだしも(外部監査の導入とかがありえます)、PR不足の解消というのは、考えてみると難しいものがあります。自分で大々的にやったら自画自賛ですから、受動的にどこかの誰かが褒めてくれるのを待つより他はありません(困ったことに、他のメディアは基本的に縄張り争いの敵でもあるため、褒めてくれる人がいたとしてもなかなか表には出づらい)。すると、今後は、民放の視聴率を奪うだけのキラー性を備えていて、なおかつ高品質という番組を開発していくことが最も必要だということになります。こうなると一筋縄には行きませんから、中の人の力量が問われます。そこに期待したいところです。と同時に、せっかくお金払ってるんだからNHKの番組を見ようという姿勢を僕らも持つのが大事ですね。

今後は、それこそ中立公正な立場(不偏不党と言えばいいのか)から、受信料を払う/払わないを各人が判断する上での材料となるような本、言い換えると、各人のNHK論を十分なものにならしめるような本が出れば良いなと思います。現状の問題は、そういう立場がどこにも存在してないということにあるんでしょう。もし出るとしたら、欧米でそういう本が出てそこそこなベストセラーとなった後、それが翻訳されて「欧米でベストセラー」なんてオビを伴った形だったりするのかもしれませんね。

関連:
本よみうり堂(書評)
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20070109bk03.htm

「公共性とは」論考深める 武田徹著『NHK問題』
http://www.sankei.co.jp/books/shohyo/061222/sho061222000.htm

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コメント(5件)

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ども。お久しぶりです。

NHKの受信料を払う理由としては、
・ユニバーサルサービス
・質の高いコンテンツ
ざっくりとこのあたりだと思います。

が、ソフトは民放に比べて良質なコンテンツを維持しているものの、現在では放送ハードとしては全国へのユニバーサル化が完了し、むしろグローバルなネットの全盛に対して県域放送などが足かせの状態。しかも不祥事の連続で、視聴者としてはお金を払う気持ちもいっそう萎えます。
TetsuS
2007/02/04 12:11
(量・質ともに)健全な受信料徴収を目指す場合に、まず予算を国会承認=与党が握ってる以上、BBCと違って義務化・罰則化は無理というかやっちゃだめでしょう。となると逆方向の、支払うインセンティブを上げる必要があると思います。綱紀粛正は大前提として、例えば、過去の超優良で豊富な映像アーカイブを正規視聴者のみにネット公開するとか。というか、あれだけ広大な独自課金システムを持ってるってのは、課金手段に困ってるネット系コンテンツ配信事業者にとっては羨望そのものなわけで、ビジネスとしては非常におもしろいと思うんですけどね。NHKですから、どこまで「商売」できるのか分かりませんが。

ということで、ekitai君がNHKに言及してたので、これはということでコメントしました。『NHK問題』は読んでないけど『電波利権』は面白かったです。

では。もうちょっと修論がんばります。
TetsuS
2007/02/04 12:12
>TetsuSさん
コメントありがとうございます。こっちは何とか修士論文の審査も終了したようで、ひとまず落ち着いています。

アーカイブのネット公開に関しては、そういう話が結構出ているようです。しかし、実際のところ問題になっているのが権利関係で、いつでも視聴できるようになると、映ってる人の利害関係に大きな問題が生じると言います。何かの本で見た限り、深夜のNHKアーカイブスでも相当この点の苦労があるのだそうです。是非とも解決してもらいたい限りです。

テレビはテクノロジーと相性が良いものですから、それにあわせて新しいサービスを誰もがメリットを理解できるような形で提供していくのがあるべき姿なのだと思います。
エキタイ
2007/02/04 12:46
こんな書評もありましたよ。もう一度読み直してみてもいいかも。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50758584.html
東方不敗
2007/02/09 10:46
>東方不敗さん
コメントありがとうございます。この小飼弾氏と僕とでは、立ち位置も土台にある知識も全く違いますので、感想が異なるのは当然だと思いました。もしかすると、もっと違う立場になってから読み返したら彼のような感想を抱けるようになるのかもしれません。
エキタイ
2007/02/09 16:49

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